オンライン診療 by Hospital Support導入の背景
オンライン診療を始めようと思われたきっかけを教えてください。
私は、もともと埼玉県の大学病院で勤務をしていたのですが、定年退職を機に週5日こちら(乃木坂ACクリニック)で診察をできるようになりました。専門は、子どもの整形外科と形成外科、特に手外科で、先天異常などで生まれつき手に異常のある方を主に診ていました。また、あざや口唇裂、口蓋裂などの方も診察していました。しかし、大学病院や埼玉県内で同じような専門をやっている先生がいらっしゃらず、定年退職後も大学病院で勤務している時に診ていた患者さんを続けて診ていく必要がありました。ただ、幼いお子さんや兄弟がたくさんいらっしゃる方などは、埼玉県からこちら(東京)まで通っていただくことがなかなか難しいということがあります。一方で例えば、どこか他の医院に紹介したとしても、「同じようなことをしてくれない」「4人の兄弟を連れてわざわざ遠い病院に行ったにも関わらず、診てもらえなかった」などということになるのではないかと思っていました。このように、埼玉県で診ていた方々が医療難民にならないためには、どうしたらいいだろうと考えていた時に、ちょうどこのシステムのお話をいただきました。今まで埼玉県で診ていた方を、子どもの成長のタイミングを逃さないように、継続して診ていく1つの方法として非常に良いなと思い、導入を決めました。
オンライン診療をどのようにお使いですか?
例えば、手術が既に終わっていて、経過観察をしていた子がいたのですが、小学校に入った時に使う道具が変わり、学校から「握力がちょっと出てない」と言われたということがありました。それまではずっとよかったのですが、小学校に入った途端、その子に要求される技術が急に変わる訳です。そのような場合には、握力をつけるためのリハビリを行います。最初の1回は外来に来てもらい、リハビリのやり方などについての説明をしますが、それ以降の診察はオンライン診療で行うことができます。診療の時には、それをライブで写していただいて「ちょっとこれが違う」とか、「上手くできたね」ということをこちらから伝える形で、オンラインでも、筋肉がついているか、リハビリが正しくできているかということは十分把握することができます。子どもの場合、成長が速いので、3か月も空いてしまうと身体やそれに合ったリハビリの内容が全然違ってしまいます。オンライン診療であれば、クリニックから遠くに住んでいる方が毎回来院しなくても、子どもの成長に遅れることなくキャッチアップすることができるので、とても便利に使わせてもらっています。
子どもの「本来の姿」という情報は、オンライン診療だからこそ得られた。
対面診療と比べたオンライン診療のメリットはありますか?
リハビリは、手の動きであったり、発声、舌の動かし方や、言葉を選んで言ってもらったり、笛を吹いてもらったりもします。例えば、大人の方が脳出血などで障がいが残ってリハビリをする場合、できるかできないかということは、本人の疾患や症状次第だと思います。しかし、子どもの場合は、恥ずかしくてできないということがあります。病院に行くと走り回って泣いちゃう子、ここ(クリニック)に来たら恥ずかしくて一言もしゃべらない子、もじもじしちゃう子などがいて、そういう子でも帰る時には受付のところで大声でしゃべっているということがあります。でも、オンラインであれば、そういうお子さんもおうちにいるという安心感があり、実力を発揮することができる訳です。子どもの場合、オンライン診療であれば、その子の本来の姿で診察することができるので、オンライン診療だからこそ得られる情報というものもあると感じています。また、これはオンライン診療を始めてからわかったことなのですが、兄弟がいるお子さんの場合、おうちの中での兄弟との関わりなどから、その子の人間関係形成能力を見ることができます。ビデオチャットを繋いでいる時に後ろで兄弟が走り回っていたり、ちょっかいを出してきたりということがあって、それに対してその子がどのように対応しているか見ていると、「どうしてこの子がそういう言葉をしゃべっているのか」という背景がわかったりするので、そのメリットについては意外でした。
オンライン診療を始められて患者様の反応はいかがでしょうか?
大学病院にいた時に周りの開業医の先生から紹介を受けていて、その時に築いた関係から、今もこちらに紹介してくださる先生がいらっしゃいます。そのような患者さんは、基本的には外科的な施術が必要なので、オンライン診療にはなりません。ただ、例えば術後急に患部が赤くなってしまって、すぐに来院できないような時に、一旦オンラインで診察するということが可能になりました。そうすることで、患者さんが知らない病院に行って、新しい先生に説明をして診察してもらうストレスが軽減されているかなと思います。また、オンライン診療を導入する前は、電話で聞いて写メを送っていただいて、ボランティアでそういったやりとりをしていたので、医院としても、きちんと診察をして診療代をいただけるようになって良かったと思いますし、患者さんとしても、オンライン診療システムで正規に医院とコンタクトをとれる信頼感があると思います。
あとがき
診察する拠点が変わっても、どうにかして患者様の診療を続けようとする責任感と、子どもたちの成長を見守り、それ合わせた診療を行う姿から、岸先生の愛情を感じました。先生のこうした診療の一助となれますよう、今後もサービスの向上に努めて参りたいと思います。